多胎妊娠

  • multiple pregnancy

  • 概念
  • 同時に2人以上の胎児が子宮内に存在する状態
  • 排卵誘発生殖補助医療技術の普及で増加傾向
  • 二卵性双胎は人種差や家系差がある

  • 分類
  • 一卵性双胎(33%): 1個の受精卵が発生過程で2つに分割
  • 受精後1〜3日(外細胞塊はまだ分化していない): 二絨毛膜二羊膜性双胎(25〜30%)
  • 受精後4〜7日(胞胚初期、外細胞塊はすでに分化): 一絨毛膜二羊膜性双胎(70〜75%)
  • 受精後8〜10日(着床後、羊膜腔はすでに存在): 一絨毛膜一羊膜性双胎
  • 受精後11日以降(臓器の原基が発生している): 結合双胎
    -画像-
  • 二卵性双胎(67%): 二絨毛膜二羊膜性双胎

  • 診断
  • 胎嚢2つ: 二卵性双胎か二絨毛膜二羊膜性双胎
  • 隔膜の厚さ2mm未満: 一絨毛膜性
  • 隔膜の厚さ2mm以上: 二絨毛膜性
  • 一絨毛膜二羊膜性双胎と一絨毛膜一羊膜性双胎の超音波での鑑別は妊娠10週以降
  • 性別、血液型、指紋、耳垢などの性状で出生後に一卵性か二卵性を確定する

  • 周産期死亡率
  • 双胎妊娠: 4〜6倍
  • 一絨毛膜二羊膜性双胎: 10倍弱(←双胎間輸血症候群子宮内発育遅延
  • 一絨毛膜一羊膜性双胎: 数十倍(←臍帯巻絡、懸鉤、双胎間輸血症候群子宮内発育遅延

  • 合併症
  • 早産: 一胎につき3週づつ在胎週数が短縮
  • 妊娠貧血
  • 妊娠高血圧症候群
  • 双胎間輸血症候群
  • 羊水過多症
  • 双胎の一児死亡
  • 微弱陣痛弛緩出血
  • 分娩時の常位胎盤早期剥離

  • 管理
  • 妊娠管理
  • 早産予防: 妊娠28週ごろから安静、切迫早産の徴候あれば子宮収縮抑制薬
  • 栄養: 一児あたり300kcalを付加
  • 分娩管理
  • 胎位:
  • 頭位-頭位(最多): 経腟分娩
  • 頭位-骨盤位: 経腟分娩帝王切開術
  • 懸鉤(非頭位-頭位で好発): 十分な会陰切開をして第2児を帰納させ第1児の娩出を助ける、帝王切開術への切り替えも
  • 一絨毛膜双胎では分娩後に直ちに臍帯を結紮・切断
  • 第1児分娩後1時間経過しても第2児が娩出されない場合は、陣痛促進薬投与、必要に応じて急速遂娩術
  • 弛緩出血予防: 分娩直後に子宮収縮薬、子宮マッサージ


  • ref18;ref21
  • 050829

  • 双胎間輸血症候群

  • twin-twin transfusion syndrome; TTTS

  • 概念
  • 一絨毛性双胎において血液が一方の胎児から他方の胎児へ流れ血流の不均衡が起こる病態
  • 一絨毛性双胎の15〜30%に生じる
  • 急性双胎間輸血症候群慢性双胎間輸血症候群がある


  • ref18
  • 050829
  • 慢性双胎間輸血症候群

  • 概念
  • 妊娠中の長期間の循環血液量の不均衡による

  • 病態
  • 受血児
  • 循環血液量増大: 心拡大→心不全、非免疫性胎児水腫
  • 尿量増加: 羊水過多症
  • 供血児
  • 子宮内発育遅延
  • 乏尿: 羊水過少症→肺低形成、stuck twin syndrome
  • 腎不全←腎血流量低下

  • 治療
  • 娩出の時期: 受血児の心機能、供血児の発育


  • ref18
  • 050829
  • 急性双胎間輸血症候群

  • 概念
  • 一方の胎児の心拍出量低下により、血管内圧の急激な変動が起こり生じると考えられている
  • 分娩直前に比較的生じやすい

  • 病態
  • 受血児: 心不全多血症
  • 供血児: 貧血ショック

  • 治療
  • 胎児ジストレスを呈すれば急速遂娩術


  • ref18
  • 050829
  • 双胎妊娠のレポート(考察のみ)

     患者は、IVF‐ET(ICSI)により二絨毛膜二羊膜性双胎妊娠が成立した方である。多胎妊娠ハイリスク妊娠であり流産早産が起こりやすく、本症例のようなIVF‐ETによる双胎の場合、周産期死亡率(妊娠22週以降)は3.15%となっている。これは単胎の2倍程度である(1)。双胎の合併症としては、双胎間輸血症候群低出生体重児、胎児奇形、妊娠中毒症、母体貧血、胎盤早期剥離、弛緩出血、臍帯異常、羊水過多、陣痛微弱、胎位異常、双児の1児死亡がある。本症例でも、母体貧血、下腿浮腫前期破水陣痛微弱、弛緩出血を認めている。

     母体貧血の治療には、妊娠以外の原因による貧血を鑑別したのち、鉄剤を投与し、必要に応じてビタミンB12、葉酸などを併用する。本症例では、鉄剤投与によってHb11 g/dl以上となり貧血の改善を認めている。

     下腿浮腫は、母児の予後の面からはそれほど重要ではないが、妊娠中毒症発症の早期発見の面からは診断的価値がある。治療は、まず安静・食事療法を行う。食事療法としては、減塩(7g/day)とカロリー制限を行う。妊娠中の過度の体重増加は妊娠中毒症の増悪因子であり、カロリー制限の必要がある。本症例でも、非妊時より20kgの体重増加を認めており、妊娠中毒症の増悪因子として作用していたと考えられる。

     前期破水は全妊娠の5〜10%程度に起こるが、双胎はその原因のひとつである。多くの症例では、破水後、半日程度で自然に陣痛発来するので、経過を観察する。一日を経過しても本格的な陣痛発来をみない場合、プロスタグランジンE2で陣痛を誘発し、速やかに分娩を終了すべく努力する。子宮内感染所見が出現すれば、頸管内細菌培養を行った後、抗生物質を投与しながら、早期に分娩を終了させる。本症例では破水7時間後に陣痛発来したが、子宮内感染を疑わせる所見があり、後述の帝王切開施行の判断要因のひとつになった。

     微弱陣痛は、分娩を遷延させるので母児の双方に悪影響を及ぼすことになる。本症例では、続発性微弱陣痛となり、後述のように帝王切開の適応となった。

     双胎の場合、子宮筋の過度進展や胎盤付着面積の増加などにより、約20%の確率で分娩後の弛緩性出血が発生するため、分娩後に子宮収縮薬投与が必要になる。


    [双胎妊娠分娩様式について]
     分娩様式は、経膣分娩と帝王切開の2種類がある。双胎分娩の場合、帝王切開施行率は27.7%〜54.6%という報告がある(2)。当科の指針(3)による帝王切開適応は、@経膣分娩困難、A急速遂娩が必要だが経膣分娩不可、B経膣分娩が母児に危険と考えられる、B品胎以上の多胎、D分娩誘発・促進に反応しない、E性器ヘルペス(初感染で発症から1ヶ月以内、再発で一週間以内)、F特発性血小板減少性紫斑病合併妊娠で臍帯穿刺により臍帯血血小板5万未満、G帝王切開の強い希望で経膣分娩の同意が得られない場合の8点があげられている。また、双胎の分娩様式については、T)先進児が頭位であるとき、U)先進児が骨盤位でも以下にあげる双胎の帝王切開の適応に合致しないときは経膣分娩としている。双胎の帝王切開の適応としては、a)上記の産科的帝王切開の適応、b)前置胎盤胎児ジストレス、先進児骨盤位で足位あるいは1500g未満など陣痛誘発、陣痛増強の適応が生じた場合、c)前期破水陣痛未発来、d)続発性微弱陣痛、e)過期妊娠(妊娠41週以降)、f)一羊膜一絨毛性双胎、g)先進児が骨盤位で第二児に対しDiscordanceがある場合をあげている。

     本症例は、二絨毛膜二羊膜性双胎妊娠の患者である。先進児は頭位であり、母体・胎児の双方に経膣分娩を困難とさせる要因がなかったため、経膣分娩が予定されていた。破水7時間後には陣痛が出現し、CRP0.6mg/dlとやや高値であったが胎児心音良好で陣痛進行していたため、経過を観察していた。当科の指針では上記のように、双胎の場合、前期破水陣痛未発来ならば帝王切開の適応となるが、本症例では破水7時間後に陣痛発来している。陣痛は、その後、3分間隔にまでなったが、陣痛出現から24時間後には、子宮口開大6cm、陣痛間隔10分となり、続発性微弱陣痛となった。当科の指針では、双胎の場合で続発性微弱陣痛と診断されたときは帝王切開の適応となる。また、WBC上昇およびCRP上昇のため子宮内感染も疑われた(尿検査からは尿路感染症も疑われるが、排尿時痛、頻尿などは認めてない)。帝王切開の要約は、当科では、母体が手術・麻酔に耐えうること、胎児が生存していることの2点をあげている。本症例は、術前身体所見・検査によりこの要約を満たしており、患者・患者家族へのインフォームド・コンセントを行ったうえで、帝王切開が施行されている。

    文献:
    (1)標準産婦人科学第2版、医学書院、1994年
    (2)周産期医学vol.29 no.7、1999−7
    (3)産科婦人科診療指針第4版、新潟大学医学部産科婦人科学教室、1999年
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